久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

高潔であるということ (幻冬舎ルチル文庫)

高潔であるということ (幻冬舎ルチル文庫)

  • 高潔であるということ

★★★★☆
不器用な男二人の不器用な愛のお話でした。五年前のある老人の事故死をきっかけに、憎むものと憎まれるものになった真岸と志田。老人の死を忘れず、大人になったら復讐するという約束を果たす為に、志田の税理士事務所にアルバイトとしてもぐりこんだ真岸なのですが、イメージしていたのと現実の志田の格差に戸惑います。自分がよしとする事に関しては労力を惜しまず地道に行動し、たとえ意向が伝わらなくても相手にプラスになることを考え、結果が受け入れてもらえなくても仕方ないさと諦めも早く、大事にしているものすら無い志田。頭がよく真面目で目端が利く分、いろいろなことが見えてしまい、その扱いに悩んでしまう真岸。
志田が大事にしているものを壊すことで復讐を果たそうとしていた真岸は、浅はかなことに自分を志田の大事な人にさせようと働きかけます。結果、諸事情が明らかになるにつれ、ミイラ取りがミイラになってしまうわけですが。
今まで読んできた砂原さんの作品は、明るい、あるいは暗さはあってもぐいぐい進む感じのものが多かった気がするのですが、この作品は二人の性格のためかただひたすら低い位置に流れる霧のようなイメージのお話でした。しかし、読書中読了後ともに“暗い”感じではなく、“静かな”そしてあとでホッとするものでした。

硝子の筐 (幻冬舎ルチル文庫)

硝子の筐 (幻冬舎ルチル文庫)

  • 硝子の筐

★★★★☆
事故で両親と姉を亡くし、自らもトラウマを抱えた七魚と、姉の婚約者だった朝長の同居生活から始まる恋のお話。お互いの中に自分の居場所を求めて、相手に必要とされる“家族”になろうと努力する二人。ところが七魚は、自分の気持ちをごまかしきれなくなってきて・・・
七魚は若くして家族を失ったという苦労や、朝長の生活全般のお世話をしている大変さはあるものの、経済的には困っておらず、朝長や矢代(父の知り合いの画廊オーナー)、幼馴染みの芳基たちに守られている存在なので、行動に幼さを感じます。そんな七魚を愛しく思いながらも、恋愛感情に結び付けられなかったのは朝長のほうだったために、二人の関係がギクシャクしだすのです。
恋人には永遠を求められないけれど、家族には永遠がある。そんな理由からただひたすら家族に拘り、自分の本当の気持ちを隠そうとする七魚と、その不安定な七魚の扱いに戸惑う朝長なのでした。
矢代もどこかで言っていましたが、若紫のようなお話で、そういう部分では大変王道なお話です。お約束事は破られないのです。二人が丸く納まったのも、矢代や芳基の後ろ盾があったからこそです。芳基なんかは全くの貧乏くじなので、どこかで救ってあげて欲しいものです。

ファーマーのたまご (ビーボーイノベルズ)

ファーマーのたまご (ビーボーイノベルズ)

  • ファーマーのたまご

★★★☆☆
なぜか帯に書かれた“ダチョウの求愛”とカバーイラストの黒縁眼鏡に惹かれてしまいまして、読みました。農業系の大学生の生活がよくわかりました。飼育小屋の掃除をしたりとなかなか肉体労働なお話なのですが、なぜだかあまり泥臭さを感じませんでした。主人公だけでなく脇キャラも意外とおしゃれな感じなので、普通の大学生と何ら変わらない気もしました。
さて、自宅通学の敦也と福島から出てきた七生がまとまるまでのあれやこれやのお話なのですが、恋愛は初めてという七生が主人公なので、戸惑いの中大変ゆっくりゆっくりしたお話の進み方です。こう言ってはなんですが、敦也が思わせぶりすぎるので、なおさら七生は戸惑うわけです。
可愛い恋のお話が好きな方にはおすすめですが、とにかくもどかしいので覚悟がいります。ただし、邪な目で読んだ場合、おじゃまキャラの黒瀬くんがなかなかいいポジションにいるのが楽しいです。彼が主役のスピンオフが読みたいくらいです。