久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

優しい罠 (クロスノベルス)

優しい罠 (クロスノベルス)

  • 優しい罠

★★★★☆
すごいお話でした。愛とセックスはイコールで結ばれるのか?愛しているからこそ傍観者になるという選択もあるのか?年齢は愛の妨げになるのか?など、問題提起も多いお話だったと思います。
素敵なおじさま・葛城教授(50歳のゲイ)は、過去の事件の後遺症でEDになり、まだ若いくせに第一線を退いてしまっていて、第三者的目線でシナリオを作り、妄想と自分の代理育成で自己満足を得ようとしているのです。カッコイイお兄さん・海堂(葛城の教え子・25歳)は、葛城の代理として選ばれたわけで、ノンケだったはずなのに葛城と美乃理に振り回された挙句、すっかり美乃理のワンコと化すし・・・きれいでわがままな女王様・美乃理(葛城の妹の夫の連れ子・もうすぐ20歳)はそもそもが極度のファザコンで、結婚してしまった父親の代わりを葛城に求めて、積極的に同居話を持ち出すようななかなかしたたかな青年で、葛城を先生先生と慕っている割りに、海堂もキープしちゃうという小悪魔ぶり。そこに少しだけ、葛城の元カレ・但馬が関わりますが、かといってドロドロの展開になるわけでもなく、不思議な空気感の中でお話は進みます。
三角関係のようでそうでもなく、葛城のてのひらの上で転がされているようで、海堂や美乃理に自分が無いわけでもなく・・・読み進むほどに美乃理が恐ろしくしたたかで“君臨”しているようにも見えてきて・・・そのわりには葛城はさらに上から目線の余裕ある態度で、つかみどころがない感じ。最終的にまだまだ謎の要素を含んだ但馬が飄々と現れたものだから(お話の始まりから、全く関係のない存在ではなかったのですが、実態として現れるのがお終いの方なので、非常に謎が多い気がします)、結局葛城はどうしたいんだろう?というところでお話は終わっております。
あとがきにて剛さんは、葛城を脇役とおっしゃっているので、いわゆる主人公の二人(海堂×美乃理)が上手くいって、今後の美乃理がちょっと怖いかもしれないというところで終わっているのでかまわないんでしょうか。しかし、もう少しこの先の展開を知りたいのが正直なところです。君臨しているようで葛城の思うままに操られていく美乃理・・・どんな男に育っていくのか見てみたいのです。

夏服 (幻冬舎ルチル文庫)

夏服 (幻冬舎ルチル文庫)

  • 夏服

★★★★★
本編と番外編4作収録されています。↑の「優しい罠」と平行読みしていて、あまりに落差が激しいので、逆によりいっそうこちらの爽やかなキュンキュン少年のお話がキラキラして見えました。いつもは学生同士(それも、高校生)にはあまり入れ込めないんですが、これは良かったです。イラストもピッタリだったので、★5つにしちゃおう。
本編は、高校生の頃から付き合っていて只今同棲中のカップルの、ちょっとしたケンカがきっかけで振り返ることになった馴れ初めのお話です。はじめは自分の気持ちにすら気付かずただときめいて、そのトキメキが恋だと知って戸惑い、受け入れられて舞い上がり、取り越し苦労に悩み・・・あのエピソード、このエピソード全てに若い輝きが満ち溢れていて、一々キュンキュンさせてくれるしウルっとくるのですが、決して明るさを失わない気持ちのいいお話でした。前後に今の二人の関係(社会人1年生の先輩・坂江×就活中の大学4年生・茅原)が書かれていて、あの過去があるから今の二人があるんだなってわからせてくれる、いい構成になっていると思いました。
【クリスマスとアイスクリーム】は元カノのことばかり気にする茅原とクリスマスと初合体のお話。まぁ、先輩は言葉が足りない部分が多々あるので、グルグルしやすい茅原は勘ぐってばかりいますが、取り越し苦労なだけでした。ラブラブで結構結構。先輩、やさしいし。
【日なたとワイシャツ】こちらは、これからの展望を含めた今の二人のお話。ほのぼのと、まったりと、ちょっとケンカもしながら支えあっていって欲しいと思う私でした。
なにはともあれ、真島くんという理解者もいて何より何よりでございます。