久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

酷いくらいに (ガッシュ文庫)

酷いくらいに (ガッシュ文庫)

  • 酷いくらいに

★★★★☆
できのよい兄・克至にコンプレックスを抱き、自分の居場所を探しているような広見。高校生の頃から克至を好きで、事故に遭い車椅子生活になってから恋人として付き合うようになっていた秋のお話です。
どちらも本音はそれぞれを貪欲なほどに欲しがっているのに、相手のことを思うからこそ思いとどまったり、些細なことで疎遠になったり・・・大変もどかしい展開なのですが、広見の一途な思いや秋を特別視しない優しさが爽やかで、読後感のよいお話でした。
2話目の「ひとの望みのよろこびよ」は、秋目線で語られます。辛い過去があっても、他人より少し脆弱であっても、我慢をしなくてはならないことがあっても、プラス思考で前向きな秋の強さ。そんな彼が崩れてしまう事件。相手のことを考えるから上手くいかず、相手のことを想うから支えあえる。苦しかったけど最後には温かくなれました。
このお話のもう一人(?)の主役は秋の飼い犬ゴールデン・レトリバーコーデリアです。彼女がいたからこそうまくまとまった二人だともいえると思います。また、克至は容姿も頭脳も性格も経済的にも全てに恵まれた存在で、欠けたものがあるからこそ知りうることを知らずに成長してしまった人とも言えるでしょう。あとがきでちょっとかわいそうなことを言われていますが、大人になってから生まれて初めて大きな挫折を味わってしまった克至には、気が強くて我が儘で甘えん坊の受けちゃんがお相手の方が幸せになれるような気もします。
で、全体を通して思ったのが、身障者と健常者のあり方についてです。以前、仕事がらみの研修で、“交差点で車椅子の人が止まっていたらどうするべきか”という題でロールプレイをしたことがあるのですが、まさに、克至×秋タイプと、広見×秋タイプの関わり方が出てきました。そして、そこで先生がおっしゃっていたのは、本人を尊重するという、秋が求めていたことでした。共に生きる、それだと思います。

HOME (Holly NOVELS)

HOME (Holly NOVELS)

  • HOME

★★★★☆
好きだった故人の甥を引き取り育てた男・篤とその少年・直己のお話です。臆病で不器用すぎる二人なので、とにかくコミュニケーション不足です。篤目線でお話が進むので、かろうじて篤の気持ちは分かるのですが、直己はほとんどしゃべらないので、篤が憶測することしか彼の気持ちを知るすべがありません。はじめのうちは、とにかく直己はどうしたいと思っているのさって、なぜただひたすら黙っているんですかって、イライライライラ・・・篤が見合いを決めたあたりで、やっと直己の気持ちがちょっとだけ見えてきたのですが・・・そこは木原節・・・そう簡単にハッピーエンドにはなってくれません。そこで、そんなにかわいそうな出来事を持ってこなくても・・・といった事件が起きるのですが、その痛さは、COLDSLEEPシリーズにも匹敵するくらいだと思いました。
で、直己は不運にも身障者になってしまうわけですが、↑の秋とは正反対なほど、後ろ向きで後ろ向きで・・・篤が必死に尽くすのに、どうにも心が開かない・・・二人して心も体もボロボロになって・・・
結局二人の思いは同じ方向を向いていたわけで、なんだかんだで犬も食わないラブラブ話、篤の親友・立原くんは気を揉み損ってくらいだと思いましたけど。

しかし、奇しくも同じような身障者が主人公のお話を続けて読みました。(実は、「HOME」を先に読みました。)「酷いくらいに」というタイトルの小説は前向きな強さを感じさせ、「HOME」の方は家庭の温かさというよりは、二人だけで完結してしまっている怖さを感じさせられるという、両極端な展開でしたが、どちらも引き込まれるお話でした。