久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

手錠 (プラチナ文庫)

手錠 (プラチナ文庫)

  • 手錠

★★★★☆
これはストックホルム症候群なのか、三角関係なのか、ベターハーフを探し当てたお話なのか。
救急外科医・松浦は、ある日突然若いヤクザ・祐司に拉致されて、兄貴分の毛利の銃創を治療するよう求められます。セレブな家庭に生まれたものの、愛されて育った記憶がない松浦(救急外科医)と、DV家庭で育った祐司(ヤクザ毛利の舎弟)。治療が終わるまでは逃げられないようにと、二人の手は祐司によって手錠で繋がれるのですが・・・
既に残りの人生はおまけだと思っているような松浦は、非常に冷静で淡々としていますが、冷静な目で見ることができるからこそ、ヤクザの割には純真な祐司の本質に惹かれていきます。祐司の方は、父親から受けたトラウマを乗り越えるためにも“男らしさ”にこだわるがゆえ、ナルシストのヤクザ・毛利の舎弟になった経緯があります。そんな彼が松浦の潔い行動を目にするたび、松浦に惹かれていくのです。
ほんの一週間ほどの時間で、二人の関係はどんどん濃密になっていくのですが、毛利が回復することにより、この先どうするのが一番いいのかという壁にぶち当たるのです。祐司は杯を交わした兄貴・毛利を選ぶのか、愛していることに気づいたばかりの松浦を選ぶのか・・・辛い別れがやってくるのは目にみえているのですが・・・
松浦が常に淡々としているし、意外と祐司も落ち着いた青年なので、たとえ抑えきれない劣情が弾けて狂おしいエッチが展開されているシーンでも、どこか達観した感じの淡々さがあるのですが、その分毛利がバリバリのヤクザで熱さを補ってくれています。また、野戦病院のような治療シーンや、手を繋がれたままの二人の色々な行動が、お話をおもしろくしてくれました。
はっきり言って、多くの犯罪行為をしているお話なのですが、なぜかみんなの幸せを願いたくなる終わり方で、読後感が良かったです。