久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

隣人には秘密がある(キャラ文庫)

隣人には秘密がある(キャラ文庫)

  • 隣人には秘密がある

★★★☆☆
辛口評価になりました。なぜならば、BLにしなくても良かったのではないかと思ったからです。両親と早く死に別れ、祖母も亡くなり祖父は闘病中という大学生・太一が、祖父の代わりに「すばる荘」というボロアパートの管理人をすることになってからのお話です。曰くありげな住民と真面目で面白みが無い太一の関係が少しずつ深くなっていくのですが、中でも管理人室の隣に住む小説家・吉住のことが気にかかり・・・
住民それぞれと太一の過去や、現在の彼らの関係が少しずつ明らかになるとともに、吉住と太一も少しずつお互いに踏み込むようになっていくのですが、キュンとするような必然性が少々弱いというか、いっそのこと“めぞん一刻”の響子さんと五代くんくらいの、じれったい関係止まりの方が、他のエピソードを深く突き詰められて良かったんじゃないかと思ったわけです。吉住がポルノ小説家なもんだから、エッチシーンはそこそこ濃厚ですが、かといって変態的なわけでもなく、いっそのこと妄想入っちゃっても潔かったかもとも思いました。
ただ、メッセージ性はありました。祖父以外に身寄りが無い太一が、“別れ”を恐れるばかりに、故意に人間関係を希薄にしていることに気付いた周囲の人たちが、謎めいた態度をとることによって興味を持たせ、心を開かせる。場所が新宿とは思えないほど人情味溢れたお話になっています。嫌な人が一人も出てこないので、温かくなりたいときに読むといいと思います。

男子迷路 (CITRON COMICS)

男子迷路 (CITRON COMICS)

  • 男子迷路

★★★★☆
少しずつリンクしているお話が6編入っています。そのものズバリを描かせたら、結構エロエロになる阿仁谷さんですが、今回は意外とロコツなエロ部分は抑え目です。(しかし、十分エロいですが。)
心(しん)の純情にほだされちゃうノンケの児玉。兄も、振った相手(児玉)もキスしたの(心)も、周り中がゲイの中、置いてきぼりのようこ。魔性のゲイ・楚川にメロメロのまさみ(ようこの兄)。まさみに言い寄るものの、すげなくあしらわれているBこと伴内要一と双子の兄・肯一。肯一にだまされたのぶおと複雑に傷心の要一。教え子猿谷をのぶおから取り戻したい肯一。
どのカップルも“この人だから”好きなんだという部分がハッキリしていて、所謂「割れ鍋に綴じ蓋」状態なんですが、なぜか本当にそれぞれがしっくりくる感じで、締めの言葉にキュンっと納得できるのです。で、やっぱり一番ホッとしたのは最後のお話でやっと自分を認められた要ちゃんです。これは既に初出のCabで読んでいましたが、他のお話を知ることができて、一層感動できました。

  • 熱情と欲望のゆくえ 1

★★★★☆
かたや、美貌で将来を嘱望されている若手の外科医・有森。(ワケアリの過去あり)かたや、天才と呼ばれるクールな外科医・桐谷。過去の事件と現在の事件、近寄りがたいオーラをまとう桐谷の不思議な優しさ、事件に翻弄されながらも気丈に振舞いつつ、桐谷を頼りにするようになる有森、そして、桐谷の不思議な行動。
大病院が舞台のサスペンス仕立てで、展開は王道と言っていいと思います。2巻完結なので、桐谷が今後どのような正体を現すのか気になるところで終わっています。医療事故やストーカー被害、人事への介入など、ドロドロとしたエピソードがいっぱいな上に、抗うどころか幸せを感じてしまうような有森の桐谷への気持ちに、大丈夫なのか?と心配もしたくなりました。
有森はいい人を貫き、桐谷は闇を引きずっているような、いまだ謎の存在で、この白と黒の二人がどうすれば次巻でハッピーエンドになるのかを考えてしまいました。

  • 熱情と欲望のゆくえ 2

★★★★☆
まさか、そんな風に展開するとは思いませんでした。有森が悩んでいた過去の事故も、桐谷が引きずっていた疑惑も、(犯罪か否かは別として)誰一人悪い人は存在しないで解決に向かいました。どちらかと言えばこの事故に関係してしまった二人は3年間も、抱えなくていい悩みを抱えていたわけです。二人だけが男同士の関係かと思いきや、老いも若きも愛憎渦巻く複雑なチェーンとなっていて、これでは前巻のうちに結末を予想しようと思っても無駄だったことが分かりました。
問題解決の糸口になる伏線が、前巻ではほんの少ししか明かされていなかったのは、サスペンスとしてルール違反な気もしますが、この展開でまぁまぁ納得できたのでOKとします。そして、復讐の目的が霧消してしまって、後悔ばかりの桐谷に、有森が強気に迫る場面はなかなか良かったです。
全編を通して、外科医というお仕事(正しいか否かは別として)もたっぷりやってくれたのも良かったと思います。