久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

君を抱いて昼夜に恋す (ディアプラス文庫)

君を抱いて昼夜に恋す (ディアプラス文庫)

  • 君を抱いて昼夜に恋す

★★★★☆
博徒・源太と彫師・八束のお話。久我さんですからちゃんと大阪弁、それも大正時代の頃のだそうです。加点式の評価だったら満点にしてもいいくらい、あれもこれも良かったのですが、減点式の評価で考えるとマイナス点もあるので、★4つになりました。限りなく5つに近いです。
で、良かったところ。今まで読んだ任侠ものの中でも一番と思えるほど、彫師の仕事であったり博徒とやくざの違いであったりがわかりやすく書かれていて、登場人物たちの置かれている立場が微妙に違うのだということが、よくわかりました。時代的にも古すぎず新しすぎず、丁度良くノスタルジックなので、着物と彫物、賭場や日本家屋がエロティックな感じをより高めていると思います。で、その時代から逸脱した感じが全く無いので、安心して浸っていられるのです。
主人公たちの背景やお話の展開は先が読めてしまう点もありますが、そうでありながら先が楽しみというのがいい点ではないかと思います。たまたま私は、口絵をカバーに隠したまま読んでいたので、最終的に源太の背中に彫られるものがなんだかを知らない状態だったのが、またよかったと思います。あれなのかな?これなのかな?と想像する楽しみもありますよね。
はじめは彫師に刺青を頼みに来た博徒という導入でしたが、その奥には様々に絡み合った人間関係が描かれているので、主人公以外のキャラにも味があってよかったと思います。
お話のテーマは、『相手に見合う自分になる』ではないでしょうか?まぁ、最初から源太に抱かれちゃえば解決なんだということはわかりきっているのですが、八束が己の力量不足を悩み葛藤するのは、人間が成長するにおいて必要なことなんだなと思わせてもくれます。
本編では源太に刺青は入りません。書き下ろしでやっとお目見えするのですが、やっぱり書き下ろしの影の主人公は、八束の初めての男・忠五郎と昔なにかしら関係のあったらしい織間組の与助でしょう。ぼかされている二人の過去が気になってしょうがありません。まぁ、添い遂げられない事情の二人と“生きる世界が違ても、骨の髄まで惚れた男と情をかわせて、俺は幸せや”と八束に言わせる主人公二人のあまあまな関係が対称的でより際立ちます。源太に『かいらしい』と言わせる八束の恥らう姿は、ほんまにかいらしいです。
ちなみに、エッチシーンは刺青の描写とあいまって、なんとも耽美でございます。
悲恋になりそうですが、忠五郎と与助のお話、書いてください。