久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

初心者マークの恋だから (新書館ディアプラス文庫)

初心者マークの恋だから (新書館ディアプラス文庫)

  • 初心者マークの恋だから

★★★★☆
何ヶ月待っていたのでしょうか?やっと読めました。で、前知識も無く裏表紙のあらすじも読まずに読み始めたら、警察関係でもドライバー関係でもなかった。いや、初心者マークって言うから勝手にそっち方面のお話かと思っていたんです、すみません。
まだまだ新米の域のマジメな私立高校教師・謙吉と他校のベテラン教師・達川とのお話です。
自分でもゲイという認識はありながら、今まで恋愛経験の無かった謙吉は思わぬ出来事で達川と出会い、一目惚れのような状態になります。相手も高校教師で「同業はわかると言ったが…同類もわかるんだよ」と告げられ、雰囲気に流されてホテルまで行ってしまったものの、土壇場で逃げ帰ってしまい気まずい関係になってしまいます。その後高文連弁論部門(本当に存在するようですね。)の専門委員として再び顔を合わせる事になり・・・
謙吉は初めての恋に浮かれた自分に戸惑ったり、自信をなくしたり、相手が公私混同しないのでなおさら期待と落胆を繰り返したりと、波にゆれる小船の様です。読者という第三者の立場で二人の関係を見ていると、端々で達川がどれだけ謙吉のことを大切にしているかがわかるので、いちいち不安になる謙吉にイラっとするときもありましたが、そういえば自分も若い頃、浮かれたり戸惑ったり自信が無くて告白もしなかったくせに落胆はしたなぁと、共感できる部分が沢山ありました。そして、『僕はどこもかしこも未熟です。遊びの恋などできない不器用な人間です。・・・』と達川にはっきり言えずに悶々とする謙吉の、一歩踏み出すことを引き止めてしまうほどの真面目な部分にもどかしさをおぼえるけれど好感が持てます。
「君はふだんは安請け合いをするのに、肝心なところで後ずさりしてしまう。そして俺は、ふだんは余裕なんだが、本気になると突っ走る。」と達川が言うように、向いている方向は同じなのに上手くいかない二人がやっと上手くいった時、おばさんはホッとしてしまいました。で、エッチのノウハウまで教えてやるからと言う達川はやっぱりスケベなオジサンだと思います。
2話目は「ライバル同士の恋だから」と言うタイトル。え?誰と誰がライバル?謙吉の教え子、有能な弁論部員・安仲くんか?それとも嫌味な同僚・青柳か?って思っちゃいましたが、そういう意味ではもともと主人公の二人は弁論大会のライバル校に在籍していたんでした。実は、1話目は二人の関係が三歩進んで二歩下がるのと弁論部がどんな存在なのかを読み解こうとしている部分があって、読書するリズムに乗りづらかったのですが、2話目のほうは謙吉が達川ラブを前面に押し出してきたのと、そこへ絡んでくる弁論大会関係の出来事が違和感無く進んでくれたので、テンポよく読み進められました。まぁ、それでも謙吉が一人でグルグルしていることが多いわけですが。「他の弁士に勝つことが目的なんじゃない。伝えることだ。より強く、より深く、自分の思いをわかってもらうこと。それは、恋と同じじゃないか。」という謙吉のモノローグに、このお話が初心者と弁論をキーワードにして伝えたかった部分が入っているのかなと思いました。全体的に非常に真面目なお話であるとも思いました。誠実さとか、勤勉さとか。
ちなみに、エッチシーンは両方あわせても2回だけですが、なにせ溜め込んでいますから濃厚です。

スリープ (新書館ディアプラス文庫)

スリープ (新書館ディアプラス文庫)

  • スリープ

★★★★☆
それぞれが逃れられない過去に囚われ、睡眠障害を背負いながら生きている倉知と上木原。カウンセラーにすら言えない過去の傷。お互いのことを大切に思いながらも、単純に心を開けない理由。誰も彼もが頑なで、もう少し楽な生き方ができるんじゃないかと言いたくなるような展開の中、ナルコレプシーの発作の最中に倉知が強姦?された事件から絡んだ糸が解け始めます。
どこで睡眠に陥ってしまうかわからないナルコレプシーと、笑うという情動だけでもカタプレキシーの(全身が脱力してしまう)発作を起こす倉知は、自分の欲求も感情も抑えながら生きています。なのに、魔性とも言われるほどの美貌の持ち主のため、周囲は放っておいてはくれません。反対に、夜は目が冴えてしまって時間を持て余し、昼は眠れない眠気に身を持て余す上木原は、奔放な性生活の日々のようでいて実は・・・
これが現実のお話ならば、こんな子供たちを子供たちだけで何とかさせるなんて絶対に間違っていると思います。しかし、やはり現実問題として、正直な話自分で何とかしていかなくてはいけない部分があるのも事実かなぁと思います。私自身、一人でも生きていけるもんって思いがちですが、何かがあったとき本音が話せる存在がいるのといないのとでは、心に残る傷の大きさは違うだろうなと考えさせられました。
どっちが割れ鍋でも綴じ蓋でもかまわないから、自分にピッタリあった相棒って大事な気がします。
それから、ナルコレプシーといえば、「マイプライベートアイダホ」。リバー・フェニックスキアヌ・リーブスですよ。ビデオ漁って見直してみようと思います。