久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

夢の終わり (クロスノベルス)

夢の終わり (クロスノベルス)

  • 夢の終わり

★★★★☆
あとがきにもありましたが、シンデレラストーリーです。何も持たず、自分のことすら思い出せない記憶喪失の男・朝里が、木津川という男の屋敷に軟禁されるところからお話は始まります。木津川に復讐とばかりに強姦された朝里は、木津川の弟を暴行した犯人で、彼に恨まれているようだということだけは知るのですが、それ以外はあやふやなまま屋敷での生活が始まります。それまで自分という存在自体があやふやで、生きている意味を感じられずにいた朝里は、たとえ憎まれているのであってもそこに自分の存在価値があると、自分の生き方を木津川にゆだねます。
自分の行動を解析し、過去の自分がどんな環境にいたかを想像しながら、木津川の求める形の人間になろうと毎日を送る朝里と、健気な朝里の長所を認め、過去は忘れてこれから立派な人になればいいと言ってくれる木津川。こんなに素直な人や、こんなに前向きなお人よしはそういないですよと思いながらも、純粋にその人の役に立ちたいと思ったり、背景や環境ではなくその人個人を認めることができる人たちを見てなんだか幸せな気分になりました。
朝里の記憶が戻るのとともに、それまで謎だった部分がパタパタと明らかになってくるのですが、結構王道な展開ではあるものの、全てのピースがはまってくれてスッキリしました。おとぎ話的勧善懲悪ものもたまにはいいと思いました。