久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

雪よ林檎の香のごとく (ディアプラス文庫)

雪よ林檎の香のごとく (ディアプラス文庫)

  • 雪よ林檎の香のごとく

★★★★★
デビュー作というのは概ねハズレが無いものなので、この本も発売日には購入していたわけですが、結局今まで積読でした。題名からもカバーイラストからも、せつない系のお話だろうなと思っていましたが、その王道な展開に文学的な脚色、王道っぽいキャラ立てにピリリと効いたスパイス。やられちゃいました。
親の期待通りの優等生でいたかったのに、いちいち受験で失敗し余裕の無くなっている高校1年生・結城志緒とワケあり国語教師の担任・桂のお話。授業中に内職をしてまで来年度の編入試験に向けて猛勉強をしている志緒が、図書室で桂の意外な面に触れてしまったことからお話がはじまるのですが、志緒の素直で遠慮が無い分、自分から生きづらくしているような少年らしさと、教師の中では若手で結構さばけているように見える桂が、老成した考え方をするようになった過去が絡み合うことによって、お互いを支えあうような関係になっていくのです。幼馴染のりか、年の離れた妹の誕生、“ゆうき”の存在など、一つ一つ納得しながら経験を積み大人になっていく少年の心の成長がうかがえます。また、桂の先生らしくないざっくばらんな物言いの中で、時々語られる重みのある言葉に説得力を感じます。シチュエーションの描写は水彩画の様と言いましょうか、場面場面で様々な色が見える気がします。
書き下ろしは高3になってからのお話。卒業するまではしないという宣言どおり、密かに清い交際を続けている二人を、進路とか、りかとか、先輩の栫さんとか、謎の“ヨウコサン”がかき回してくるのです。微妙にすれ違ったり、一人で解決しようとしたりしながら、最終的には“フライング”で結ばれることになります。桂と葉子さんとのエピソードが最後の最後で語られ、それはそれでいいお話なのですが、このお話はここに持ってくるのがベストなのでしょうか?もう少し早くに挿入して、最後は結ばれて終えるのではあまりに王道すぎてつまらないでしょうか?★は5つにしましたが、この終わり方がちょっと納得いかないのですが・・・