久江羽の読書?日記

長々放置しておりますが、時々腐的な何かを書くと思います

光さす道の途中で (幻冬舎ルチル文庫)

光さす道の途中で (幻冬舎ルチル文庫)

  • 光さす道の途中で

★★★★☆
友情なのか恋なのか、微妙な関係に苦悩する少年たちのお話。
シャイで付き合い下手な真野の親友・栗田が、ある日友人だと言って高東を連れてきたことにより、それぞれがそれぞれとの関係に揺れ動くさまが描かれています。三角関係のお話といってもいいかもしれません。
真野目線でお話は進みますが、彼ははっきり言って大変屈折した性格で、自分からバリアを張っているくせに疎外感を感じ、度々「蚊帳の外」という言葉を使いたがります。自分が蚊帳の外に置かれるのもいやだけど、誰かが蚊帳の外で嫌な気分になるくらいなら、自分が身を引いても仕方がないとか・・・。また、何でも分かっている風で自己完結型はやとちりマイナー人間なので、いちいちひがみます。しかし、そんな彼を好きな男が二人もいるものだから、彼のあずかり知らぬところで静かなバトルが繰り広げられているらしいのです。栗田と高東同志も親しい関係なので、お互いが真野のことを思っていても“抜け駆け”をするわけにもいかず、言葉や態度の端々で牽制球を投げるのですが、大学進学を期に栗田が戦線離脱するのです。真野が栗田を友人として非常に大切に思っているのを知っているの高東は、身近にいるのが自分だけになりいい雰囲気になっている時でさえ、最後の一歩が踏み出せません。で、真野といえば彼らの気持ちに薄々気付いていながら、さらに自分は高東の方に強く引かれていることも感じながら、微妙なバランスを保っている三人の友情を壊したくないことが優先なのです。私には、この三人それぞれがギリギリまで水を張った容器をこぼさないように持っているように思えました。その水面にさざなみすら立てたくないくらいの緊迫した関係に思えたのです。物語りも終盤、やっとそれぞれの気持ちを打ち明けるチャンスがやってくるのかなという矢先、栗田が事故死してしまいます。彼がいなくなったことで、真野と高東の関係が急接近するかと思えばさにあらず、緊張の糸が切れたように高東のほうが崩れてしまいます。真野を挟んでの三角関係ではなく、それぞれが支えあっているような関係だったからこそ、そう簡単には上手くいかないのだなあと思いました。
最終的にはハッピーエンドですが、それまでがもどかしいもどかしい。でもそれが読みどころでもあると思います。